ソロで北アルプスの大天井岳(おてんしょうだけ)を目指します。
表銀座として超定番ルートを、憧れの槍ヶ岳をゲットしに行きます。
キリマンジェロ登山を正式に申し込んで、テンションが上がっているので、トレーニングを兼ねてロングコースを行きます。
(この気合いが後々大惨事の原因に。。。)
上記はざっくりとしたルートです。詳細な地図は下記の地図のご購入をお願いいたします。
地図:昭文社「山と高原地図37 槍ヶ岳・穂高岳 上高地」
中房温泉に車を停めて、燕山荘まで行き、そこから大天井岳まで南下します。
距離にして片道10km、標高差は燕山荘までで1250m、そこから登ったり下ったりを繰り返して、2921mの大天井岳まで行くので、累計で2000mほどのアップダウンだと思います。
相当ハード。しかしキリマンジェロのアタック日も13時間の工程なので(それも標高5000mの世界で!)こんなところでへばってたら話になりません。 ←今回の登山中はこの言葉をずっと繰り返し、己を鼓舞していました。
体調はいたって良好だったのに、高速を走っていたら突然物凄い腹痛がきて、あわててサービスエリアのトイレに駆け込む。
30歳過ぎてからおなかが完全に弱くなった気がする。歳には勝てないのね。
駐車場は思ったよりも車が多くて驚いた。
そんな突然の腹痛(下痢気味)を抱えながら、6:15入山!
登山届がパンパンですw
強引に押しこみます。
深い樹林帯の中を登っていきます。
5分に一度、物凄い便意が襲ってきます。
必至で耐えながら進むのでペースがあがりません。
燕山荘(えんざんそう)までは、5kmほどの工程です。
第二ベンチまでは雪はなくて快適だった。
第二ベンチを過ぎるとアルプスが見えてきます。
これはおそらく去年行った常念岳かな?
第三ベンチを過ぎると雪が深くなってきます。
富士見ベンチをすぎる頃にはこんな感じ。
しかし旗が多く、道に迷う心配はありません。
アルプスとわたくし。
暖かいと読んでジャージですが、帽子と日焼け止めを忘れてしまうという失態。
表銀座の稜線は風があり防風対策が必要ですが、樹林帯は風もなくむしろ暑いくらいです。
中央奥が目的地の大天井岳だと思われます。
遠っ!!
8:20 合戦小屋に到着です。駐車場から約2時間です。
下痢の腹痛で悩まされているものの、意外にも去年と同じラップタイムです。
合戦小屋をすぎると、けっこうな傾斜になります。下りがやばそう。
日本三大急登の合戦尾根。雪だとその急登さを実感します。
!!
尾根の向こうになんか見えてますけど!!!
槍ヶ岳くるーーーーーーーー!
超かっこいいぜ!今日も相変わらずとがってるぜ!
そして左が目的地の大天井岳。
遠っw!!
8:40 燕山荘と燕岳が見えてきました。
しかし雪が深く、足に疲労が来るので遅々として進みません。
しんどい!
そして腹痛のレベルも上昇中でストッパを飲むも効果なく、いざとなったら野グソも辞さない状況です。
ノー野グソ記録が途絶えるかもしれない正念場です!
大天井岳が見えます。
行きたくなくなるレベルの遠さですw
9:26 燕山荘にやっと到着!駐車場から3時間ちょっとです。
前回が2:40分で燕山荘だったので、やはり雪が多いゾーン+下痢でペースダウンしてます。
今回も燕岳(つばくろだけ)は圧巻の美しさ!
燕岳の左奥が剣岳か立山だと思われます。
とりあえず燕山荘でトイレを借りて、事なきを得る。これで腹痛も快方に向かいました。
スタッフの方もウルトラ親切だったし、今年絶対泊まってみたい!
山小屋に泊まりの人は下山して、登りの人はまだきていないので、貸し切り状態です。
北アルプスの山々が美しいです。
右の人面のモニュメントはいったい。。。
燕岳はここから20分ほどで登れますが、去年登ったので、今年はあの大天井岳の山頂を目指します!
繰り返しますが、行きたくなくなるレベルの遠さですw
9:50 大天井岳に向けて出発!
槍ヶ岳が迫ってきます。この槍ヶ岳を見たくて大天井岳にしました。
一人すれ違ったおじさんが、「岩のところは雪で通れないから、岩の間の冬ルートを行きなさい」と教えてくれた。
なんと親切な方だ。感謝感謝。
それがここなんだけど、狭い岩の間をよじ登るから、カメラをぶつけまくりだし、危なさもかなりのもの!
しかし親切に教えてもらえて助かった。
って思っていたけど、帰り通常ルート(岩の横を通る平坦な道)をみたら、全然普通に通れた。。。俺、試されたのかな。。。?
10:40 燕山荘から1間ほどで大下り頭に到着。
ここから名前の通り、むっちゃ下ります。
ってことは帰りむっちゃ登ることになるので、マジきつい!
しかし、ここから見える、大天井岳と槍ヶ岳は半端なくきれいです。
そのスケールと美しさは写真では伝わりづらいですが、僕の登山絶景ランキングのトップ3には入ります!
にしても超遠いです。50回くらい引き返そうかと思いましたが、キリマンジェロに行くことを考え、「きつくても登り切るんだ!」っと自分に言い聞かせ先に進みます。
しかし既に足はかなり疲労しています。
12:00 やっと大天井岳の下に到着しました。燕山荘から2時間ちょっと。
しかしここを登りだしてすぐに、大ハプニングが!
① ルート上に雪が1mほどの積もっています。踏むと腰までズボズボ踏みぬき、下は思いっきり切れ落ちているので、怖すぎて通行できません。ここを通った足跡があるのですが、まだ雪が堅い状態の時のもので、もうすでに雪がかなり解けかけていています。
② どうしようか悩んでいたら、岩場を登ったような跡が。疲れてて判断力が低下していたのか、登頂に固執し過ぎていたのか、ちゃんと確かめずに岩場を登りだしてしまいました。
するとそこは60度はある急傾斜で、おまけに浮き石だらけのがれ場。「まずい!ここは違う!」と思ったときには3mほど登ってしまっていて、蟻地獄のように砂と石がどんどん下に落ちていきます。
引き返すにも傾斜がありすぎる上に、浮き石しかないので足場が確保できず、落ちだしたら一気に滑落します。
そのため登り切るしかないのですが、浮き石だらけの蟻地獄状態なので、足場がなく登れません。
登れないし降りれないという最悪の状況になってしまいました。
このルートはこの日俺しか登っていないので助けは来ません。落ちないように必至でしがみつきながら、深呼吸をして覚悟を決めます。
5mほど上にルートがあったので、そこまで何が何でも這い上がるしかありません。
落ちたら終わりなので、慎重に、確実に、あわてずに、少しずつジリジリとよじ登ります。
おそらく10分ほどかけてなんとかよじ登ることに成功しました。完全に事故が起きる一歩手前でした。
③しかし問題はこれで終わりではなく、登ってしまったので降りなければいけなくなりました。
もはや目的が登頂ではなく生存しての帰還になりました。
なので頂上まで行って体力を消耗することを避けたいので、すぐに下山します。
雪が解けて脆くなっているルートを通る他ありません。写真でも分かる通る急傾斜で落ちたら50m以上滑落します。
しかし再び覚悟を決めて、一歩一歩慎重に、少しだけ生えていた細い木を必死で掴みながら、腰まである雪ゾーンをなんとか通過することができました。
木が折れていたら落ちていました。本当に恐ろしかった。
原因は、ルート確認の甘さと、登頂への固執だったと思います。
ここまでで駐車場から6時間かけてきているし、キリマンジェロ登山を申し込んだ直後ということで「こんなんでヘタってたらダメだ!」というキリマンジェロへの闘争心が、引き返すことを良しとしませんでした。
「引き返す勇気」とか自分でも普段言ってるくせに、まさか自分が実際こういった状況になるとは。。。
そのため、岩がくずれ落ちた跡を、登った跡と勘違いして、確認せずに登るという愚行へと走らせたんだと思います。
無事に戻れたあとは、今起こったことがあまりに怖すぎて、その場に座り込みそうになりました。
しかし自分の足で駐車場まで戻らなければならず、気合いを振り絞って歩いて戻ります。
もはや水分も残り少なく、疲労も限界ですが、少なくとも燕山荘までは行かなければなりません。
燕山荘まで無事にたどり着ければ、泊めてもらって体力が回復したら下山するという選択肢もあります。
さっきまで山々の美しさに感動していましたが、今は恐怖でふるえそうです。
天然記念物?のライチョウをゲットしましたが、喜ぶテンションではなかった。
14:45 事故ポイントから2時間半かけて、ようやく燕山荘に辿り着くことが出来ました。
足は疲労でガクガク、水分も残り少なく、ずっと一人で、本当に心細かったので、
山小屋のベンチに人が座っているのが見えたときは、本当にホッとしました。
仲間と登っていたなら違ったのかもしれませんが、一人で誰もいかないルートを行くという行為は、良くも悪くも孤独です。
九死に一生を得て、疲れ果てながら見た燕岳のあまりの美しさは忘れられない光景になりました。まるで絵画のようでした。
山小屋で水分を買い、十分に休息し、15:30下山開始。
急斜面でもはや足の踏ん張りが利かず、少なく見積もっても30回は滑って尻もちをついた。
はるか下にスタート地点が見えますが、全然近づいてきません。
無事に下山出来たのは17:45 入山から約12時間後でした。
今回の登山は多くの教訓を得た気がします。
山での無茶が大事故につながると実感させられました。
調子に乗るなよ、と山の神さまに怒られた気分です。
まだ30歳だし、体力に自信あるし、と大丈夫だと思っていたことが全然大丈夫じゃないと思い知らされました。
そして引き返すことのむずかしさも実感しました。
その山への熱意や苦労が多いと、分かっていても引き返せなくなる、恐ろしいです。
今後は今まで以上に慎重な登山をしようと固く心に誓います。